季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

茶の花(ちゃのはな)

花の季語の話題が多くなってしまうが、この時期、ひょっこりと出会う、小ぶりの茶の花はいい。飾り気もなくむしろ枝の陰にひっそりと咲く。白い花のなかに黄色い花芯。
私の田舎ではどういうわけか、畑の境界に植えられていた。大きくなれば相手の畑の方に枝も伸びるだろうに。でも、争いのもとになる境界にお茶が植えられているのは面白い。
お茶の産地では養分が花に取られてしまうからと、あまり花を咲かせないのだという。産地でなくてよかった。
お茶の実は話題にならない。食べられないからだろうか。実から油をとってスキンケアなどに使われると聞いたことがある。
春先の田んぼのわきを流れる川とも言えない水の移動。それに浮かんでやってくる実。日だまりの訪問者。柔らかな泥はきちんと沈んで、清んだ水のうえを小舟のようにやってくる。少年の穏やかなひと時。
茶の花の今ひらきたるうすみどり 長谷川櫂