季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

冬の蝿(ふゆのはえ)

朝の陽ざしが部屋の奥まで伸びてきて、押入れの方にまでやってくる。少したつと、庭の霜が解けてぬかるみになる。縁側や戸袋のあたりはひと時あたたくなって、蝿がどこからかでてくる。動きが鈍くなっていて、飛ぶのか飛ばないのか。
夜明けは大幅に遅くなっているのに、日差しに起こされる。眠いというより布団のなかでぬくぬくしていたいのだ。母は縁側近くで縫物をしている。
飛びたがる誤植の一字冬の蝿   秋元不死男