季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

蝶(ちょう)

この季節、七十二侯では「菜虫蝶と化す」。昔の人は蝶を夢虫と呼んでいた。この呼び名、荘子の説話「胡蝶の夢」に由来する。蝶になる夢を見たが本当の私は蝶で、今人間になっている夢を見ているだけではないか、と。蝶の夢は幻想を誘う。
古今集に「散りぬれば後はあくたになる花を思い知らずもまどう蝶かな」(僧正遍昭)がある。花に舞う蝶への関心はいつの時代も変わらない。
蝶と言えば春の季語だが、揚羽蝶など大型のものは夏に分類される。また、夏の蝶、秋の蝶など断って使う場合もある。
われ蝶を追ふ蝶われを追ふごとし 高浜年尾