季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

花氷(はなごおり)

これまた絶滅季語だろう。エアコンのない時代の風物。デパートやホテルのロビーなどに氷柱が立てられていて、なかに造花がある。涼を呼ぶ。見て楽しむものだが、子どもは大目に見られて、触ったり頬をつけたりした。

氷に花を入れるのは、技術がいったのではないかと思う。実は高校時代、製氷のアルバイトをやったことがある。魚の卸業者で、マイナス30度の大きな冷凍庫で霜落としをしながら、隣の製氷所でも働いた。空気を入れながら凍らす。芯が凍る前にパイプを抜くが、空気を入れながら凍らすことによって泡の入らない透き通った氷ができる。ひと夏のアルバイトだったが、霜焼けができた。

花氷向ふの妻の顔ゆがむ 茂野六花