季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

扇風機(せんぷうき)

ある時、電池かなにか買うのに電器屋に立ち寄った。店頭に扇風機が並んでいて、思わずどれも同じなのにどうしてこんなに種類が多いのか、質問してしまった。主人は我が意を得たりと、ひとつひとつ風を体験させてくれた。羽根の枚数などによって、たしかに来る風に違いがある。風の柔らかさの違いも感じられる。もう1台あってもいいか、と買ってしまった。

学生の頃、扇風機をもっていた。進駐軍払い下げの灰色の扇風機。おそろしく風が強くて、壁に貼っておいたポスターの画びょうが飛ぶ勢い。

最近は、歩きながら持ち歩く扇風機が人気だ。そこまでしなくても、と思うが、扇風機のリバイバルは嬉しいことでもある。エアコンは窓を閉めて使うが、扇風機は窓を開けて使ってもいい。そういうおおらかさが扇風機にはある。

扇風機止めればありぬ庭の風 塩田育代