季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

衣被(きぬかつぎ)

この季節にしか出回らない、小ぶりの里いもを皮のまま茹でて、塩をつけて食べる。日本酒にあう。「きぬかずき」が転じたものだという。きぬかずきは平安時代の身分の高い女性が被ったもの。「きぬかつぎ」はそんな気取ったものではないが、なぜか次々とあとを引く。つるっと皮がむけるのも面白い。まさか平安時代の女性が被ったものと芋を一緒にすることもできにくいが、酒を飲みながら思いを馳せる分にはお金もかからない。

今生のいまが倖せ衣被 鈴木真砂女