季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

薄紅葉(うすもみじ)

家のなかで、日差しがこれまでは入らなかったところまで届くようになった。日の入りが早くなりつつある。草が穂をつけるようになった。季節が大カーブを曲がるように、変化していっている。

うっすらと紅葉しかかったものを薄紅葉という。初紅葉という季語もあった。季節の変化を待つ気持ちと、あきれるほど暑かった数週間前をいとおしむ気持ちと、さてどちらが強いのだろうか。というよりも、なんどこの繰り返しを味わうことができるのか。「紅葉且つ散る」もそうだが、変化を味わうのが季節というものらしい。

「すべてのものは変化する、変化するものは互いに関係しあって変化する、喜びも悲しみも変化の中にある」と言ったのは武田泰淳だったか。紅葉になり切れない惜しむようなひと時を味わう。

ときめきはきのふのこころ薄もみぢ 上田五千石