季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

芒(すすき)

芒に関する季語もいろいろと多い。芒の花穂が開くと動物のしっぽのようで「尾花」とも呼ばれる。芒の群れが風になびくさまは風情がある。月にもあうし、秋の空にもあう。

今では使わなくなったが、屋根を葺くカヤにも使われた。子どもの頃、我が家のたい肥小屋は茅葺きだった。いや違う。茅葺きに似せた藁ぶきだった。職人さんが屋根にのぼって竹やりのようなもので綱を通す。屋根裏で待っていた私たちは、屋根の竹に綱がとまるように町のほうだとか海の方だとかいう。そして屋根の上から来る「竹やり」に綱を挟む。それを整えて、藁ぶき屋根ができるのである。たい肥小屋は肥料舎と呼んでいた。大きな下肥樽があったり、藁が詰まれている。その藁は、冬の間に内職をする畳裏を織るのに使われた。縄をなったりもした。

そういうわけで、カヤを知らなかった。芒ではなく、そういう植物が別にあるのだと思っていた。

また、芒ではよくケガをしたものだ。ひっかっき傷どころではない。剃刀のように切れるのだ。

泣たくば尾花がくれに空見べし 鈴木道彦