季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

羊歯刈(しだかり)

クリスマスの喧騒が遠のくと正月の準備に忙しくなる。と言っても最近はそんなに準備はない。おせちでさえお重ではなく小分けの方が人気がある。
正月のお飾りもスーパーやコンビニに売っている。昔は飾り物は自宅で作ったものだ。父が作りながら「俺の代で終わりかなあ」と言っていたがその通りになってしまった。
さて羊歯刈。正月前に採りに行ってしめ飾りに使う。羊歯、一説にはひつじの歯のような形をしているからと言われているが、他の説もあるようだ。
羊歯の花の花言葉があるが、私は羊歯の花を見たことがない。もちろん冬場ではないだろうが、そういう人たちは他の植物と勘違いしているのかも知れない。
夏だったと思うが、餅をついて、野ばらの葉でくるむ。それで山に採りに行くこともあった。取りに行くと言えば、11月の寒くなってきたころ、学校から帰ると「川で魚を取ってきて」と母に言われる。恵比須様の日のことだ。記憶というのは芋づるのようなものだ。
心許なく歯朶刈に逢ひし道 田川飛旅子