季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

雪女(ゆきおんな)

雪女を調べてみると、いろいろな言い方がある。「ユキムスメ」、「ユキオナゴ」、「ユキジョロウ(雪女郎)」、「ユキアネサ」、「雪オンバ」、「雪ンバ」(愛媛)、「雪降り婆」とも呼ばれる。「ツララオンナ」、「カネコリムスメ」「シガマニョウボウ」な…

冬田(ふゆた)

我が家の北側に田んぼがあって、冬は凍ったものだ。竹で作ったスケート靴で遊んだ。冬、アイアンの5番をもって、冬田の切り株を切る素振りをしたと言ったら、会社の上司が、ずいぶんうまいと判断したのだろう。しかしグリーンに出て、空振りをするわ散々だっ…

霜(しも)

霜が降る、と表現するが、霜は降るわけではない。朝の冷え込みが厳しいと空中の水分が木の葉などに凍りつく。それが美しい。思わず立ち止まってしまう。葉の外側に白く縁取りができて、この世のものとも思えない。から松のおとす葉もなく霜を置く 前田普羅

干柿(ほしがき)

11月ごろだったか、裏庭の渋柿をとって、家族そろって干し柿作りをする。縁側で皮をむき、納屋の軒先に吊るす。夕日が移ったような、華やかな色に染まる。冬になると甘みの増した干し柿をコタツで食べる。兄弟姉妹、父や母、一家団欒の思い出である。渋柿を…

着ぶくれ(きぶくれ)

暖冬とはいえ寒さが厳しくなってきた。手っ取り早い暖房は重ね着すること。しかし動きにくい。通勤などでは迷惑をかけることにもなる。着ぶくれの句で多いのは子どもについてだろうか。確かに心当たりがある。風邪気味だったりすると、子どもの気持ちとは別…

焼芋(やきいも)

第何次になるのか分からないが、焼き芋のブームなのだという。私も買うことが多くなった。菓子類の甘さでなく、自然の甘さが安心感を誘う。そして、品種改良が進んで、昔には考えられない甘さがある。ホッカイロなどもなかったから、カイロの役割も果たした…

花八つ手(はなやつで)

枇杷の花も今が盛りだが、八つ手も咲いている。花火が空に散ったような形だと歌った句があった。注目されるような花ではないが、花の少ない時期、蜂にとっては貴重な蜜らしい。八つ手というから葉は8つに分かれているのかと思うが、7枚から11枚くらい、いろ…

煮凝り(にこごり)

煮凝りという季語には「朝餉かな」と続けたくなる。そのくらい朝の食卓で出会うものだった。子どもの頃、熱いご飯に煮凝りはご馳走になった。大騒ぎをしている子どもたちを前に、母は面白そうな顔をしている。大人になって、呑み屋で煮凝りをたのむと、なん…

朴落葉(ほうおちば)

朴の葉は大きい。落ちていると、つい拾ってみたくなる大きさだ。昔、古びた旅館に泊まった時、朴葉に味噌と野菜をのせて火にかけたものが出てきた。鍋や皿の代わりにもなる。朴の落葉は殺菌作用があるということだから、使いかたとしてはちょうどいい。火に…

冬萌(ふゆもえ)

植物は寒いさなかにも準備を怠らない。芽吹きの準備はもちろんだが、花芽をつけている木もある。寒いさなかに枝を切っておこうと庭に下り立つが、実のなる木には容易にハサミが入れられないでいる。萌えるとは木々の芽が出ることだろうが、若者言葉では意味…

雪兎(ゆきうさぎ)

雪が降ったら雪ダルマもいいが、少ない雪を楽しむなら雪兎はどうだろう。盆に雪の塊をのせて、目は南天の実の赤、耳には南天や笹の葉を立てる。家に持ち込むとすぐに溶けてしまう。雪うさぎ恋生れし日のよみがへる 仙田洋子

鍋焼き(なべやき)

鍋焼きといえば饂飩だろう。冬はなべ物が全般的に有難い。なかでも、汁がしみ込んで色のついた饂飩をすすりながら酒をのむ。半熟の卵を大事そうに残しておいたり。じゅうぶんに汁を吸った油揚げでやけどをしたり。ぶくぶくと煮立ったまま膳まで運ばれると、…

悴む(かじかむ)

悴むほどの寒さを感じない暮らしをしていて、それだけでもありがたい。手袋やマスクをしている人もいるが、どうなのだろう。冬の季語に股引なんていうのもある。私は股引もはかない主義だ。悴むというと寒さを思い浮かべるが、心の悴みとしての意味もあるだ…

屏風(びょうぶ)

先にも書いたが、疎開してきた男女2人が我が家に住み着いて20年。2人は追うように亡くなって、お茶の道具など我が家に直接関係のないものが山のように残された。そのなかに、大きな屏風もあった。手狭となった我が家には嵩張りすぎて、雨の吹き込む納屋に置…

寒椿(かんつばき)

雪国で育ったわけではないが、雪の白さ、椿の葉の濃い緑。そして赤い花。あざやかな3色が記憶にある。椿は、散るのではなく花丸ごと落ちるので、仏花にはしないし、武家には嫌われたという。咲たやら折たあとあり寒椿 蒼虬

花柊(はなひいらぎ)

棘で武装した葉っぱだが、花は白く小さく可憐である。香りについての句が多いが、慌ただしい生活をしているせいか、私は香りのよいのには気が付かなかった。まもなく節分。柊の枝とイワシの頭を戸袋などに刺す。イワシの漢字は鰯。弱い魚で、よわしがイワシ…

冬銀河(ふゆぎんが)

冬は夜空を見る機会が多い。早く日暮れを迎えるからかも知れないし、空気が澄んでいるからかも知れない。このところ宵の明星が明るい。目の弱った私には、立ち止まっている飛行機に見える。天狼という季語がある。シリウスのことで、惑星を除けば一番明るい…

褞袍(どてら)

若い人たちはもう知らないだろう。綿の入った着物。新居を構えた頃だったと思うが、母が褞袍をつくって送ってくれた。母が亡くなって30数年もたつから、40年以上も前のことである。袖も通さずにしまってある。が、時々思い出す。母は、裁縫が得意だった。和…

深雪(みゆき)

千葉に住むせいか雪が少ない。近年はさらにそう思う。昨日の新聞だったか、雪に関してこんなコラムが載っていた。塵の嫌いなきれい好きの領主が明日この村に来るというので人々は気が重かった。ところが夜になって雪が降った。村人たちは大喜び。白一色で見…

白菜(はくさい)

冬のスーパーには白菜もキャベツもあるので、季節が分からない。冬は白菜だろうが妻に「キャベツを買ってきて」と頼まれる。キャベツは半分に、白菜は4分の1のものが売れている。最近は芯の方が黄色い白菜がある。おいしそうだ。美しい。新聞で読んだが、ス…

火鉢(ひばち)

昨日、我が家のことを書いた。続きを書こう。農家にはコタツはあるが火鉢はない。ところが我が家の座敷には火鉢があった。祖父の兄弟が内縁の女性とともに疎開してきて、そのまま我が家の座敷に死ぬまで居座った。だから家のなかで、座敷の一部屋だけは我が…

万両(まんりょう)

実は万両と千両の違いを知らない。両方とも赤い実がなる。実家の庭にもあったし、今の庭にもある。実家の庭から思うことは、考えてもいなかったが没落家庭だったのだろう。じいさんという人は百姓の土地をすべて売って、東京に出て銀行の支店長になった。だ…

七草粥(ななくさがゆ)

1月7日には七草粥を食べる。風習はあるが、育った田舎でも、我が家でもあまりやった記憶はない。だが、下に取り上げた句のように、連日飲み過ぎた人にはありがたい風習なのかもしれない。こんなことを書いていられる平和さにも感謝しないといけない。スーパ…

水仙(すいせん)

庭の水仙は肥料の関係か花が少なく葉だけがやたらに多い。それでもこの時期を忘れず数輪が咲く。それを切り花にして飾る。そんなに目立つ花ではなく、鏡の隅に映るくらいの佇まい。楚々としている。似てはいないが彼岸花科に属するという。よく話題になるの…

福笑(ふくわらい)

目鼻、口などを、目隠しして顔の輪郭のうえに置いていく。それでできた顔を見て笑い興じる。顔の造作を笑いものにするのは、今どきは許されないのではないか、と思うが、ともあれ笑いはめでたいことでもある。さぞや面白い句が多いのではないかと思ったが、…

手毬歌(てまりうた)

子どもの頃の冬のシーン。霜柱のとけたぬかるみを避けて、軒先近くで毬をつく。家族中が縁側に集まってそれを見ている。奥にコタツはあるが、コタツより日差しの方がぬくいからだ。歌に合わせたり、足の間をくぐらせたり。失敗して毬が泥に汚れても、すぐに…

繭玉(まゆだま)

我が家の方では餅花(もちばな)といった。養蚕を行う地域では繭玉というのだろう。正月気分がぬけた頃、山に行って木を切ってくる。父が言うには、花をつけない木に色を付けた餅をくっ付けて飾ってあげるのだという。何という名の木だったかは分からないが…

初鴉(はつがらす)

新年を迎えて、初めてカラスの鳴き声を聞いたり姿を見ることを初ガラスという。昔から身近な鳥だったようである。1月の半ばになったころ、どんど焼きの風習が各地にある。しめ飾りなどを燃やす。どういうわけかその時には母と私しかいなくて、早朝焚火をした…

飛馬始/姫糊始/火水始/密事始/姫始(ひめはじめ)

季語に「姫はじめ」がある。でも、現代的に使われる姫始めとは少し違う意味のようだ。平安時代、元旦には強飯(こわいい)を食べる。姫飯(ひめいい)始は普通のご飯を食べ始めること。2日から食べ始める。火水始は初めて火や水をつかうこと。初めて乗馬をす…

初夢(はつゆめ)

新年ともなればすべてのことが初めてということになる。初めを意識して行う書初めなどもあるが、とくに意識しないで経験することもある。夢などその最たるものだろう。それだけに、一年を占うものかも知れない。どうしてこんな夢をみちゃったんだろう、とい…