季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

大歳(おおとし)

大歳は大晦日のこと。数えでいえば明日で一つ年を取る。一昨日から『良寛の恋・炎の女 貞心尼』(工藤美代子)を読んでいる。良寛70歳、貞心尼30歳という出会いである。どうしても年齢が話題になる。そこで書き手の工藤は作家の森瑤子さんの話をする。「あな…

餅搗(もちつき)

田舎での餅つきと言えば12月27日だったか。まずもち米を蒸す。前日から水につけたりするから、母の仕事は前日から始まっている。幾臼も搗くから、かまど周辺は薪の山。お祭りのようだ。父が搗いて母が返しをやる。搗けたら母が臼から持ち上げて、臼にたたき…

落葉(おちば)

年の暮れというのは落ち着かない。手持無沙汰だ。大掃除など手を付ければやるべきことは限りなくある。でも、時間の空白はどうしようもない。誰かを誘って飲みにでも出かけてしまえばいいのだが、それにも罪悪感がある。ブックオフで買っておいた本を読む。…

獅子舞(ししまい)

獅子舞と言えばお正月に家々を回る門付けだが、我が家の方は年末にやってきたように思う。リヤカーに荷物を積んで男4,5人で賑やかにやってくる。子どもの頃はそれについて回ったりもした。我が家に来ると、母が兄の頭を差し出し、獅子が大きな口をあけて…

虎落笛(もがりぶえ)

今日の関東地方は風が強い。家の中にいても風が鳴る。季語に虎落笛があったなと思いだす。寒空に響く音。虎落とは竹を筋違いに組み合わせた柵のことで、そこを通る風の音を虎落笛という。どんな句があるか調べてみたが、病に関する句が多かった。胸の鳴る音…

羊歯刈(しだかり)

クリスマスの喧騒が遠のくと正月の準備に忙しくなる。と言っても最近はそんなに準備はない。おせちでさえお重ではなく小分けの方が人気がある。正月のお飾りもスーパーやコンビニに売っている。昔は飾り物は自宅で作ったものだ。父が作りながら「俺の代で終…

古暦(ふるごよみ)

暦は企業などが作り、使う以上にもらえたものだが、いまはあまり作らないようだ。使う方も、使いやすいものを買った方が気持ちがいい。部屋にいくつもかけるようなことはなくなり、それでも不便に感じない。私は手帳を持っているから、そちらの方を重宝する…

クリスマス

今日はクリスマスイブ。子どもの頃はほとんど縁がなかった。意識したのは会社勤めを始めて景気が上向いてくる時代だったろうか。今なら急いで家族のもとに帰るところだろうが、あの頃は飲むのにいいチャンス、という感じだった。それだけでは悪いということ…

霜柱(しもばしら)

暖冬とはいえ、ネギ畑に霜柱が立つ。道はアスファルトになって、霜柱を踏みしだくこともなくなった。寒いのは苦手だが、立派な霜柱が見たいものだ、と思いながらバス停に向かう。日差しとともにとけてしまうが、乾いた土をもち上げている霜柱をズックで踏み…

柚子湯(ゆずゆ)

今日は冬至。1年を通じて夜がもっとも長い。夜が長くなると気分も落ち込むらしい。うつの人も増えるとか。それもあってこの時期にお祭りが多い。気分転換して新しい太陽の季節を迎えようというわけ。クリスマスもそういうイベントの一つといえる。かぼちゃや…

布団(ふとん)

季語に背布団(せなぶとん)あるいは腰布団(こしぶとん)がある。暖をとるために小ぶりの布団に紐をつけて背中や腰に結わえたらしい。寝る時にではなく外出に際して。となると季語よりも棄語だ。見たことも聞いたこともない。防寒がいまよりだいぶ深刻だっ…

練炭(れんたん)

最近は見なくなった。一酸化中毒になりやすいからだろう。練炭というと自殺が思い出されるくらいだ。石炭やコークスの粉などを固めて作る。丸い穴が開いている。バツグンに火持ちがいい。そういうこともあって、正月が近くなると豆を煮たり、時間のかかる調…

竈猫(かまどねこ)

寒がりの猫にとって、昔は唯一かまどが暖をとる場所だったのだろう。使ったかまどの火が消える頃は人間が眠るころ。そして、朝、また火を使うころにかまどから出てくる。フーテンの寅さんの口上にある「けっこう毛だらけ灰だらけ」はかまど猫のことだが、も…

切干(きりぼし)

切り干し大根の季節である。煮付けて食べるもよし。私の田舎、水戸の近在では冬の間、作りすぎた納豆を切り干し大根と混ぜて天日に乾かす。切り干し納豆というのだろうか。地味な食材である。身近な食材ではなくなったが、2階の軒先に大根が干されているのを…

煮凝り(にこごり)

この季節、魚の煮物は翌日が楽しみだ。と言っても、昔ほどではない。いまの朝食はパンが多いが、炊き立ての朝ご飯には煮凝りが嬉しい。ご飯に滲みて、魚の骨だけが残る。出汁が出ていて、ご飯がすすんだものだ。一家団欒、朝にも全員がそろう。思いだすのは…

泥鰌掘る(どじょうほる)

稲を刈った後の田んぼをカビ田と呼んでいた。二番穂がでて、12月ともなると、それも立ち枯れる。秋から冬にかけて、学校から帰るとドジョウを掘ったものだ。1升いくらという感じで現金収入にもなったが、お金にした記憶はない。素足では冷たい。学校帰り、…

冬の蝿(ふゆのはえ)

朝の陽ざしが部屋の奥まで伸びてきて、押入れの方にまでやってくる。少したつと、庭の霜が解けてぬかるみになる。縁側や戸袋のあたりはひと時あたたくなって、蝿がどこからかでてくる。動きが鈍くなっていて、飛ぶのか飛ばないのか。夜明けは大幅に遅くなっ…

オリオン(おりおん)

日が短くなると月や星が身近になる。そして、オリオンは空に大きく描かれる。子どもの頃、それを眺めながら家路についたものである。中学の頃は天体に興味をもって、流星群や星雲を見ようと寒空を眺めたものだ。冬の季語には星が多い。日が短いことに加えて…

鎌鼬(かまいたち)

小学校の頃、友達がかまいたちで血を流して教員室に運ばれたことがあった。足、すねのあたりである。先生がかまいたちだろうといっていたので覚えている。具体的な経験としてはそれのみだが、ほんとうにかまいたちだったんだろうかと思う。かまいたちは妖怪…

熱燗(あつかん)

日本酒と言えば神楽坂の伊勢藤を思いだす。坂を上り切ったあたりを右に折れると石畳。水が打ってあって、縄のれんをくぐって店に入ると、あなた呑んでいませんか、と疑われる。小声でしか話せない店である。疑われたり、話し声が大きいと注意されても通った…

海鼠腸(このわた)

ナマコの腸、だからコの“わた”というらしい。呑み屋に陣取り、自分の世界に引きこもる。そういうふうにして食するのがこのわたではないか。あまり騒々しいところでは味わいたくない。そして、明日当たり紹介しようと思う季語の熱燗。このわたで熱燗を呑む、…

茶の花(ちゃのはな)

花の季語の話題が多くなってしまうが、この時期、ひょっこりと出会う、小ぶりの茶の花はいい。飾り気もなくむしろ枝の陰にひっそりと咲く。白い花のなかに黄色い花芯。私の田舎ではどういうわけか、畑の境界に植えられていた。大きくなれば相手の畑の方に枝…

帰り花(かえりばな)

今年は暖冬だろう。しかし暖冬でなくても、この季節に、穏やかな、暖かい日がある。日だまりになる場所に植えてある木が、春とは違った咲きぶりで花をつける木がある。狂い咲きとか二度咲きとも言う。季語は季節の言葉だが、人生の季語というのがあってもい…

冬薔薇(ふゆばら)

冬の薔薇が咲くには時間がかかる。こたつに入ったまま窓によりかかる薔薇のつぼみをみていると、つぼみは簡単に開くものではないことに気づかされる。力をこめつつ、ついに咲けない薔薇もある。周りはすでに茶色になり干からびて、少しだけつぼみの赤い色が…

銀杏落葉(いちょうおちば)

落葉樹のなかでも銀杏のはすさまじい。誰だったか、大学の研究室の窓から銀杏を眺めていたら、落葉が始まり2時間ほどですべて散ってしまったという。こちらの銀杏はすべて落葉しているのに、隣の銀杏はまだ葉をつけている。そういう不思議さにも出会う。銀杏…

焚火(たきび)

焚火と言えば枯れ葉だろう。箒で集めた枯れ葉で焚火をする。芋を焼いたりするのが定番。だが焚火が枯れ葉だけとは限らない。友人の別荘が山の中にあり、焚火をあたりながら酒を飲み明かした時には、けっこう大きな2本の枯れ木を燃やした。材木を扱うところだ…

柿落ち葉(かきおちば)

我が家から通りに出るまでの通路に柿の木がある。しきりに青い実が落ちていたのは梅雨の頃だったか。その家の住人は引っ越して、今は無人の柿の木である。この時期になってもだれも取らないから、毎朝カラスが枝にいる。それにしても、柿の落ち葉は美しい。…

消炭(けしずみ)

熾していた炭を壺に入れてまた炭にしておく。炭の再利用。最近はバーベキューなどの際に使った炭をいったん消しておくが、昔は炭ではなく燠を消壺に入れておいたものだ。燃やしていたのは炭ではなく粗朶(そだ)。ご飯が炊けると燃えていた燠を十能ですくっ…

山茶花(さざんか)

私が初めて就職した会社は女社長だった。広報の仕事を任されていて、社長からあいさつ文を書いてほしいと頼まれた。社員の奥さんにボーナスを出そうと思うので、そのあいさつ文を、というのである。寒くなってきて山茶花が咲いた、というような前文ではじめ…

風呂吹き(ふろふき)

風呂吹きと言えばだいこんかと思ったが、柿などの風呂吹きもあるという。しかしやっぱり風呂吹きと言えばだいこんだろう。ゆず味噌などで食べる。コンビニのおでんのなかでもだいこんは売れ筋らしい。市の運営している貸農園に当選して、一時期、野菜栽培に…