季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

烏貝(からすがい)

子どもの頃、川で烏貝をよくとった。大ぶりの黒い貝で、食用ではないと言われるが、私の田舎ではよく食べた。たしかに蜆などに比べると大味で、とくに美味しいとは感じられない。山の中にある沼ではもっと多くいた。泥との相性がいいのだろう。
川に釣りに行って、烏貝が夕日のあたる泥のなかで舌を出しているのに、こんな取り方もできるだろうか、と竹竿の先を舌の上にのせた。貝は竿の先まで一緒に咥えて、持ち上げれば陸に居ながらにして獲れる。小魚を釣るのをやめて、バケツ一杯の烏貝を獲った記憶がある。
世の隅の闇に舌出す烏貝 北光星