季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

海苔(のり)

東京の地下鉄の駅に日比谷がある。この「ひび」、海苔を採るための小枝などを言うと聞いたことがある。徐々に、小枝などではなく、棕櫚縄や竹割を使うようになって、今では合成繊維の網が使われている。駅名として残るほど海苔は暮らしに密着していた。
子どもの頃、海苔をあぶってと親に頼まれて、あぶったものだ。あぶったばかりだと匂いがたつが、コンビニのオニギリの海苔はぱりぱりしているだけで、かおりがない。それならと、口に痛いようなぱりぱり海苔はさけて、湿ったおにぎりを求める。
それにしても海苔はかおりで食べたものだが、現在社会にその味わいはない。
新海苔の黒髪に似て匂ひけり 荻野千枝