季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

晩夏(ばんか)

今年は梅雨が長引いているが、季語で言う晩夏は7月末。8月になれば早くも残暑となる。

晩夏には思いの複雑さがある。季節を惜しむ気持ちと、早く涼しくなってほしいと願う気持ち。さてどちらだろう。年齢が関係しているのかも知れない。それにしても、最近は夏バテよりも春バテや秋バテが多いらしい。暑さになれる、寒さになれるために体がついていかない。

『晩夏』といえばシュテフターの小説を思いだす。人によっては退屈な小説という評価もあるが、個人的には静かな、いい小説だと思っている。そうは出会えない。影響を受けた小説といえる。『晩夏』を道先案内にして、シュテフターの小説をいくつか読みふけったものだ。残念ながら『晩夏』を超える小説はなかったが。

ひた寄せて遠引く潮も晩夏なる 能村登四郎