季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

心太(ところてん)

テングサを煮溶かして作った寒天質の食べ物を心太という。天突きと呼ばれる専用の器具で押し出して麺のようにする。奈良時代からこころてん、あるいはところてんと言われて食されたようだ。

以前誰かに、ところてんとかんてんの違いって分かるか、と質問されたことがある。ところてんはテングサなどを煮て作る、かんてんはテングサにほかの海藻も加えて煮汁を冷やして作る。ところてんの方が磯の香りがして海のミネラル分も多く含まれている。

酢醤油からしをつけて食べる。地方によって食べ方に違いもあって、蜂蜜をくわえるところもあるという。どちらにしても、夏には清涼感があっていい。

ところで、ところてんには何か忘れることと関係があるのだろうか。ところてんと物忘れを句にしたものが多い。

心太忘るることを幸とせり 田原陽子