季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

花火線香(はなびせんこう)

なじみやすい呼び方は線香花火だろう。派手派手しさがなく愛好家も多い。打ち上げ花火と違って、子どもたちでも楽しめる。子どもの頃の線香花火の方が、あの炭火がはねるような音や光、最後に落ちる玉もしっかりしていたように思う。

もともとは江戸時代、香炉に線香を立てるようにして楽しんだという。短いなかにストーリーがあり、蕾、牡丹、松葉、柳、散り菊。江戸時代の人々はそのストーリーを人生になぞらえたものだった。そういう楽しみ方のほかに、子どもたちはできるだけ長く持たせることを競い合ったものだ。

いつごろからか中国製の線香花火が出回り、粗悪品になった気がする。

線香花火のいのちの玉を落としけり 山本満義