季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

末黒の芒(すぐろのすすき)

焼野の芒ともいう。草を焼いた後の黒くなった野原に萌え出た芒のこと。先端が焼かれて黒くなったりしている。万葉以来多くの歌になっている。

草木が焼けて、川の流れているのを知る、など、発見もある。

黒野や鮒のにほひの川ながれ 篠田悌二郎

春待つ(はるまつ)

待春ともいう。この季節になってくると、春が待ち遠しくなる。

ところが、雪の便りも聞かれる。関東周辺はむしろこれから雪が降ったりする。だから一層、春待つという季語で俳句を作ってみたくなる。

たらの木も春待つものゝ一つかな 高野素十

柊挿す(ひいらぎさす)

古くは宮中の門に節分の夜、柊を挿し、なよしの頭を挿した。なよしは出世魚で、その名吉の意をとったようだ。江戸時代から庶民の習俗となって、鰯の頭を使うところもある。

子どもの頃、我が家でも柊を挿した。玄関の脇の戸袋はまだよいとして、裏庭の戸にも挿した。

まだぬくき鰯の頭挿しにけり 多田睦子

冬薔薇(ふゆそうび)

冬に咲く薔薇を言う。寒薔薇、冬ばら、ともいう。

シーズンの薔薇に比べて一輪のみ小さく咲く。薔薇の華やかさとは、そのおもむきもまた違う。

一輪咲くのに、ずいぶんと日数がかかる。時には莟のまま咲かずに枯れてしまうこともある。莟が咲くためにそんなにも力をかける必要があるのかと思ってしまう。

冬薔薇の咲きためらへる日数かな 吉江八千代