季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

風呂吹き(ふろふき)

風呂吹きと言えばだいこんかと思ったが、柿などの風呂吹きもあるという。しかしやっぱり風呂吹きと言えばだいこんだろう。ゆず味噌などで食べる。コンビニのおでんのなかでもだいこんは売れ筋らしい。
市の運営している貸農園に当選して、一時期、野菜栽培に挑戦したことがある。冬場は根もの野菜がいいというので、だいこん、ニンジンなどを蒔いた。芽が出てきて植え替えたら、根もの野菜は植え替えないこと、と爺さんに叱られた。農家育ちなのに何も知らない。こういう農園には、見回って指導をしたい爺さんが必ずいる。まったく。
だいこんを煮る香りに特別の思い出がある。社会人になってから、しばらくぶりに実家を訪ねたとき、玄関を開けたとたん強く匂ってきた。生前の母についての思い出と重なっている。
だいこんは部位によって味が違う。①葉に近い上部、②真ん中の中間部、③先の細い下部。上部は甘くて堅いのでサラダ向き。中間部は甘みもあって煮込むと柔らかくなり形も崩れにくい。下部は辛みがあって薬味や漬物に。大根おろしはこの下部が最適なのだとか。葉は炒め物や味噌汁の具などに。そして1週間で1本を使い切るようにとある。
風呂吹はとろ火にあづけ夜なべ妻 中村金鈴