季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

山茶花(さざんか)

私が初めて就職した会社は女社長だった。広報の仕事を任されていて、社長からあいさつ文を書いてほしいと頼まれた。社員の奥さんにボーナスを出そうと思うので、そのあいさつ文を、というのである。
寒くなってきて山茶花が咲いた、というような前文ではじめたあいさつ文が好評なのか、旦那の勤務する会社の社長が私にまで気配りをしてくれている、そのことが好評だったのか、礼状が寄せられる。もちろん好評なのは後者ではあるが、私も気持ちがよかったものだ。
その後、その女社長が続く限り「奥さまボーナス」も続いていて、同封するあいさつ文の担当は毎年私。必ず山茶花を前文に入れた。ボーナスシーズンになると山茶花だけでなく、その女社長を思いだす。45歳で亡くなった短命な社長を。
山茶花の長き盛りのはじまりぬ/風生