季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

焚火(たきび)

焚火と言えば枯れ葉だろう。箒で集めた枯れ葉で焚火をする。芋を焼いたりするのが定番。だが焚火が枯れ葉だけとは限らない。友人の別荘が山の中にあり、焚火をあたりながら酒を飲み明かした時には、けっこう大きな2本の枯れ木を燃やした。材木を扱うところだったら、木っ端を燃やしただろう。
私の焚火体験の思い出は、家族と囲んだ焚火だ。燃やす物は稲わら。火力は弱い。だからご飯を炊くには使えない。燃え上がったと思ったらすぐ消えていく。そういう焚火。
稲わらには脱穀した残りの稲穂がわずかについていたりする。それが火のなかで白くはじける。火のなかに手を入れて素早くそれをつかみ、口に入れる。そんなことが楽しみだった。両親と兄弟がいる。焚火の前で、顔と股間が熱い。思い出にあるのは、どういうわけか朝なのだ。朝から家族そろって焚火をしているのは少し不思議だ。
人老いぬ焚火埃を眉につけ淡路女