季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

褞袍(どてら)

若い人たちはもう知らないだろう。綿の入った着物。新居を構えた頃だったと思うが、母が褞袍をつくって送ってくれた。母が亡くなって30数年もたつから、40年以上も前のことである。袖も通さずにしまってある。が、時々思い出す。
母は、裁縫が得意だった。和服も縫ってもらったことがある。これも一度、社長に年賀のあいさつに行ったときに着ただけ。昔の女性は裁縫が必須の能力だったのだろう。誰でもが洗い張りといって、和服をバラしてまた縫う。
褞袍は丹前ともいう。丹前はきれいな言い方かと思っていたが、大阪のほうの言い方らしい。東北の方だと掻巻という。寝具のイメージ。また、吉原だと花魁のイメージにもなる。
どういうわけか、褞袍を着ると尊大に見えるし、本人の意識もそうなるようだ。江戸時代には奴さんが着て道中を歩く。
褞袍着てなんや子分のゐる心地 大住日呂姿