季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

屏風(びょうぶ)

先にも書いたが、疎開してきた男女2人が我が家に住み着いて20年。2人は追うように亡くなって、お茶の道具など我が家に直接関係のないものが山のように残された。そのなかに、大きな屏風もあった。手狭となった我が家には嵩張りすぎて、雨の吹き込む納屋に置かれた。価値の分からない屏風は雨ざらしとなって表面が破けてきた。
中からは木版で刷った和紙の涅槃経が一抱えも出てきた。全部そろっているかどうかは分からないものの、とっておきたいと思って屏風をばらばらにした。中学生の頃で、屏風と言えばそのことを思いだす。
桜餅置けばなくなる屏風かな 岸本尚毅