季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

春障子(はるしょうじ)

壁のようにではなく、外界と内側を優しく仕切る障子。光の入り具合で気候や季節を感じることができる。小鳥の影が映ったりさえずりも聞こえてくる。
この、情報への接し方は不思議だ。面影のような。そういえば、現実に存在していない記憶のなかに見出せるようなものも面影という。昨日書いたが、香りも面影の一つである。
確かな存在よりも、不確かな心象風景に心を寄せる日本人の発明品ともいえる。その発明品がもっとも効果を発揮するのが、この季節といえそうだ。
人形をあやす児の影春障子 安野良子