季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

蜆汁(しじみじる)

酒を飲んだ後で蜆汁を出されると、これはありがたいと感謝する。寒い冬にはとりわけありがたい。「ありがたければ文句を言うな」と言われそうだが、それにしても小さい蜆である。子どもの頃に食べた蜆は大きかった。じゅうぶん実を味わえた。
男というのは心無い言葉に弱い。家庭内ではとくにそうだ。根に持つような言葉もある。一生忘れてやるもんか、と決意したり。蜆汁だけが慰めてくれる。そんな男の句ではないか。
妻われを凡夫といへり蜆汁 辻田克巳