季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

亀鳴く(かめなく)

春になると亀の雄が雌を慕って鳴くという。しかし実際にはそんなことはないから、でたらめの季語である。近くの江戸川の土手を散歩していたら、テトラポットに亀が登って甲羅干しをしていた。冬にはみられなかった。数匹がおり、こんな状況で使う季語だろうかと思いだした。
下の句は、大昔の市川に伝わる手児奈の伝説をよんだもの。美しい女性だったので、多くの男性に告白されて、入水自殺をしたという。その女性が水を汲んだという井戸が亀井院。いまでもある。真間の崖下にあるから、清水が湧きだしていたのだろう。亀ならぬ甕だと思うのだが、それでは身も蓋もない。
亀鳴けり手児奈の井戸の底の浮き 神蔵器