季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

塗畔(ぬりあぜ)

田植え前の作業として、鋤で畔を削り、田の泥で畔を塗っていく。雑草の芽が出たところに泥が塗られて、てかてかと光っている。数日すると新芽の方が元気で、塗られた泥を突き破って出てくるのだが。
人それぞれ、さまざまな思い出があるだろうが、わたし的にはこの風景が子どもの頃の思い出で、胸がいっぱいになる。田んぼが化粧して、「さあこれからだぞ」と言っているようだ。5月の連休の頃、家族そろって田植えが始まる。それは村としてもお祭りのようで、近所に田植えの手伝いに行ったりする。田植えが機械化する前の話だ。そして、田植えが終わると早苗饗(さなぶり)と言ってあんころ餅をつくる。
晩春のけづり細めし畦を行く 木村蕪城