季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

雁風呂(がんぶろ)

春に、雁が帰った後、海岸の木片を集めて風呂をたてる習慣がある。雁は秋に日本にやってくるとき、海上で羽根を休めるために木片をくわえてくる。帰るときにも木片をくわえて帰る。だから、残された木片は、帰れないで死んだ雁の数だという。
木片を集めて風呂をたてて、死んだ雁を供養する。そういう季語である。青森県外ヶ浜に伝わるホントかどうか分からない話。
ところで雁は「がん」なのだろうか「かり」なのだろうか。この季語に似ているものに雁供養(かりくよう)がある。しかし、供養と言ってしまうより、残った木片で風呂をたてるというところに想いが伝わってくる。
雁風呂を片手拝みにもらひけり 木村敏