季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

髪洗う(かみあらう)

髪を洗ったあとのすがすがしさ。これもこの季節の恵みと言える。濡れた髪のまま風呂を出てうろうろと探し物をする。開けた窓から風がはいる。
また、洗っている時の気持ちのありようも句になる。無心でいたり、あるいはモノローグ。そして、無防備でもある。目をつぶっているから、シャンプーかリンスか分からない。『あけめやみとじめやみ』というタイトルの小説があった。真っ暗ななかで目をあけた闇。明るくても閉じたまぶたのうちの闇。どちらも闇ではあるのだが。タイトルで気に入っているのは『胸の小づちにしたがえ』という井上光晴の詩集。
うつむくは堪へる姿ぞ髪洗ふ 橋本多佳子