季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

藻の花(ものはな)

小川や湖沼の流れの中に咲く淡水藻の花を総じて、藻の花という。小さく、白やうす黄色など地味で目立たない花だ。
子どものころ、近くの川で咲いていた。流れに沿って藻がゆらゆらと揺れていた。その藻に花が咲くなど期待もしていないので、登下校に見るともなく眺めていた。藻のあるところには小魚も集まるので、うろこが光ることもあった。
いま住んでいる市川・国府台には古くから伝わる物語がある。手児奈(万葉にもうたわれた)という女性が多くの男から求婚されて、結果、入水自殺をしたという話だが、調べていくと女性の入水自殺の話は多い。藻が流れに沿ってゆらゆらとしている。それは女性の髪の毛のようなのだろう。藻の流れから発想された入水自殺伝説も多い。
藻の花を覗けば他界も暗かりき 河原枇杷