季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

夕顔(ゆうがお)

紛らわしいが、夕顔はアサガオヒルガオとはまた違った種類で、どちらかというと瓢箪の仲間。長いのや丸いのなど大きな薄緑色の実をつけて、丸い実(マルユウガオ)からは干ぴょうを作る。さらに紛らわしいのは、冬瓜(とうがん)との違い。冬瓜は夏野菜だが、冬までもたせることができるのでこの名がついている。また、夜顔を夕顔と混同している人もいる。そういう意味で、誤解の多い花である。
夕方に咲いて、翌日の午前中にはしぼんでしまうので、夕顔と呼ばれている。思いだすのは、烏瓜(からすうり)も夕方に花開き、白っぽい花をつける。両方とも、純白ではなく少し汚れた感じの花で、あまりいい形容ではないが、私は使い古した下着を思いだしてしまう。夕方に花をつけるということで、色的な要素はないがしろにされているのだろうか。
一昨日、帚木を紹介した折に源氏物語を紹介したが、4帖に夕顔がある。源氏は夕顔を荒廃した某院に連れ出すが物の怪に襲われて夕顔は亡くなる。源氏物語以外でも、貧しい家に咲く花として詩歌に多く詠まれてきた。
夕顔のひと夜のいのち月に咲く 吉澤卯一