季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

夏座敷(なつざしき)

絶滅危惧種の季語だと言われるが、個人的には好きな季語である。
夏座敷といえば襖や障子をはずして、縁側、縁先の柱と柱の間に視界を遮るものを置かない。家のなかがガランとしている。あるとすれば、盆の時に祭壇をつくり、提灯にあかりがついているくらいか。そこにスイカがあったり。いまのようにクーラーがあるわけでもないから、風が吹き抜ける。その解放感がいい。
幾つの時だったろう。妹とふざけていて、座敷を駆けていたら、私は廊下の方に曲がったのに、妹はまっすぐ駆けて庭に落ちてしまった。額を怪我して、そのあとが半年ほど残っていた。後になって写真を見ると、妹の額に白い部分があって、申し訳ないことをしたと胸が痛んだものだ。
幼子はいつも小走り夏座敷 谷口桂子
人去りて風のあそべる夏座敷 那須信子