季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

生身魂(いきみたま)

お盆は新歴でやったり旧歴でやったり。田舎では旧歴でやることが多いから、月遅れの8月の旧盆には国内が民族大移動の時期となる。盂蘭盆会といって、精霊棚をしつらえて先祖の霊を弔う。

ところで生身魂という季語がある。季語でもなければ生身魂という言葉すら知らない時代になった。しかし地域によってはお盆に年寄りを敬う風習が残っているようだ。というより、この時期の民族大移動は生身魂のためとも言える。親に孫の顔を見せに行く。

生身魂というのは、まだ先祖の領域に入っていない、年老いた者たちのことをいう。民族大移動では故郷を訪ねるのにお土産をもっていくが、あるいは、生身魂へのお供えの意味もあるのかも知れない。新たに迎える新精霊もなく、一族が健康であることを祝うことでもあったのだろう。

眉に白もはやわれらも生身魂 森澄雄