季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

八手(やつで)

八つの切込みのある大きな葉で、見た目に分かりやすい。田舎の家には、裏庭の便所の近くにあった。日陰に強い植物である。

子どもの頃は天狗の団扇のようにして遊んだものである。たしか八つ手の別名は天狗の団扇だった。そんな葉っぱで遊んでいると、今度は1枚歯の下駄がほしくなる。あの頃、1枚歯の下駄が街で売っていたらしく、高校生の兄が買ってきたのを借りて遊んだ。兄はバンカラを気取っていたふしがある。

常緑樹で晩秋に花をつける。そんなことから八手が11月の季語なのだろう。

天狗の団扇と言ったが、魔除けの木だと考えられていたようだ。便所の近くに植えられるのもなにか意味がありそうだ。ウジの湧くのを防いでくれる木のようだ。だから、汲み取り便所のあるところに植えられていたのだろう。効能やあるいは毒もあったり、風呂に入れたりもするようだが、そうした使い方はしなかった。

目立たない植物だが、変種も多く注意して眺めたい植物である。

花八つ手燈ともす前に子を呼びに 岡本眸