季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

山笑う(やまわらう)

山の木々が芽吹くことを言う。我が家の方は一面の田所で、山なみが遠く、木の芽吹きまでは感じらない。冷たかった空気が変わってきた、その感じを知るくらいだった。山笑うは、近くに山のある景色だろう。

山が近くにある人たちの暮らしが読まれるといい。

帰郷する杜氏を見送り山笑ふ 伊東宏晃

青ぬた(あおぬた)

辞書を引くと、芥子菜をすりつぶし、酒かす・味噌・酢を加えてすり合わせ、魚や野菜をあえたもの。また、ゆでた芥子菜や浅葱を酢味噌であえたものとある。子どもの頃は食べなかったと思う。いや、酢味噌和えとして食べていたか。

青饅やときには酒をつがれもし 鈴木真砂女

雪解(ゆきげ)

雪が解けること。いうまでもなく雪の解け出すのは場所によって異なる。5月の連休に秋田を旅した時には、野原一面、雪解の水が流れていた。我が家の方では雪が降らないので、雪解の喜びを感じたことがない。

つぶやきかあらずしたたる雪解水 加藤秋邨

菠薐草(ほうれんそう)

二月のほうれん草は甘い。収穫時にわざわざ冷温にさらすこともある。そうすると甘さが増すのだという。

子どもの頃は気にも留めず寒い時に食べたものだ。美味しいという思い出も特にない。他の野菜のないシーズンなので食べるとかと思っていたが、暖かくなると花が咲いたりしてしまう。

茹で汁をきつぱりと切る菠薐草 能村登四郎