季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

白魚(しらうお)

シラウオとシロウオは種類が違うが、多くは混同している。シラウオは水から出るとすぐ死んでしまうので、踊り食いなどはシロウオの方だろう。

踊り食いを呑み屋さんで食べたことがあるが、とくになにかを味わうという感じはしない。踊り食いは自宅で食べるようなものでもないだろう。

白魚や黒きまなこを二つづゝ 日野草城

薄氷(うすごおり)

春の季語、薄氷は、剃刀のような切れ味の氷である。しかし、そうしたシャープさとともに、春を思わせる氷でもある。

昨日見たテレビで、年々暖冬になりシベリアの川の氷が薄くなってきていると報じていた。25センチの氷では、2000頭もの羊を向こう岸に渡らせることができない。岸にテントを張り、氷が25センチ以上になることを待っている。残念ながら2000頭もの羊のエサが底をついてき、危ないながら川を渡る。川と言っても数百メートルもの川である。

てのひらに草の匂ひの薄氷 鷹羽狩行

雛菊(ひなぎく)

子どもの頃、庭に雛菊が植わっていた。雛菊は花壇の前のほうで、徐々に背丈のある花が植えられていた。だから踏みそうにもなるし、それだけ愛着もあった。

近年は庭に植えることもないし、近隣の庭にも見ない。

売れ残りゐし雛菊の鉢を買ふ 湯川雅

梅見(うめみ)

桜の季節は暖かいが、梅見の頃はまだ寒い。それでも梅見と言って散歩したがるのは、やはり暖かさの片鱗なりとも味わいたいからである。

子どもの頃も、梅見で盛り上がることはなかったように思う。

梅見婆はしよれる裾の派手模様 星野立子

春菊(しゅんぎく)

ほろ苦い春菊。子どもの頃、春菊の天ぷらがお弁当に入っていた。子どもの頃はあの苦さが苦手だった。「お弁当に春菊は嫌だなあ」と母に言ったことがある。そんな注文を付けたことは春菊くらいしかない。母は「ほう、そうか」と言って笑った。

春菊の思い出はそのくらいだが、今でも春菊の香りが苦手である。

春菊を洗へば水も香を放つ 鷹羽狩行

針供養(はりくよう)

今日は針供養の日なのだとか。折れたり曲がったりした針を神社にもっていくが、自分の家で豆腐に刺したりもする。働いてもらった針に休んでもらうために、柔らかいものに刺すとも言われている。

老妻のけふ針供養と言ひしのみ 山口青邨