季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

葱坊主(ねぎぼうず)

我が家の方は新興住宅と古くからの農家が混在している。それで、アパートのそばに広大な畑があったりする。ネギ栽培が盛んである。演歌で歌われる「矢切の渡し」の矢切が近くてそこには矢切ネギというブランドもある。
散歩中に、葱坊主となった畑を見つけた。見事なくらいである。事情があって収穫できなかったのだろう。畑から、栽培している家庭の事情を想像するようなことになる。
子どもの頃を振り返ってみると、干した葱坊主をむしろの上でたたき、種をとったものだ。乾いたネギでもしっかりネギの香りがした。
買ってきたネギをしばらく放置していたら、調理中にネギのなかに小さな葱坊主の赤ちゃんを見つけた。

葱坊主はネギの花ともいわれる。薄い膜があり、それが破けて小さな花がいくつも咲く。考えてみたら、その小さな花をよく見たことのないのに思い至った。
人間に退屈しをり葱坊主 松崎鉄之介