季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

麦笛(むぎぶえ)

いちめんの麦畑。まもなく色づいてくる。穂が出たばかりの頃はなぜか心が躍ったものだ。
小学校の帰りに、麦を一本引き抜いて麦笛を作ったものだ。とくに楽しいというようなものではない。ただ鳴らす。農家出身の子どもとしては、実る麦を引き抜いたりはしない。麦のなかに、黒い穂をつけた麦があるのだ。辞書を引くと黒穂病とある。子どもの頃、そういう名前は知らなかった。
茎に爪でスジを作る。その大きさで音の高低も変わる。和音にはならないが2、3本をくわえて、複数の音を楽しんだりもする。
麦笛を吹く子に雲の美しき 原石鼎