季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

梨(なし)

山梨をはじめとして梨のつく地名は多い。ということは日本の山に梨の木が多かったということだろう。

鳥取県に行ったとき、20世紀梨の記念館があった。原木は、私の住む市川、松戸からもっていったものらしい。当時の梨としてはみずみずしくて柔らかく、画期的な品種だったのだろう。その後品種改良が進んで、20世紀梨そのもののブランドは地盤沈下した。鳥取の知人が送ってくれたが、5つくらいの品種をひと箱にして贈答用にしていた。試行錯誤が続いているようだ。

市川にも梨畑は多い。春先に花をつけていたものがもう出荷の季節を迎えている。長年、お盆に間に合うように、兄弟たちに送っている。

こちら葛飾区亀有公園前派出所」、略して「こち亀」という漫画があった。この亀有、以前は亀梨と言ったらしい。梨は無しに通じるからと地名を変えた。市川にも「ありの実コース」というフィールドアスレチックがある。

町おこしに梨の木を材料にした民芸品を作ってみてはどうだろう、と提案したことがある。白い材質のとてもいい木なのだが、あまり乗り気の人はいなかった。以前は市川も梨の産地として名を知られていたが、宅地化が進んで、いまは他の地の産物になっている。

梨棚のこごみ歩きを子に抜かれ 鷹羽狩行