季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

秋の蚊(あきのか)

夏の蚊に比べて弱弱しいと話す人もいるが、私はむしろ血を吸うのに狡猾になったのではないか、と感じている。肌への着地が初夏の頃より格段にうまくなったように思う。

太宰治の文章に、たしか「哀れ蚊」というのが出てきた。おばあちゃんが、残り少ない命なのだから殺してはいけないと言ったような。読んだのは高校生の頃だったが、不思議に覚えている。

秋の蚊の鏡に触れて落ちにけり 田村京子