季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

野分(のわき)

台風の季節である。温暖化の影響か近年は大型台風がやってくる。台風はむかし野分といった。野の草を風が強く吹き分けるという意味。季語では「野分の風」ともいう。

子どもの頃、夜に野分の風が吹くと、朝早く起きて散歩をしたものである。柿が落ちている。栗が落ちている。自然の恵みをいただいた気持ちになる。

街中に住むようになると被害のことしか頭にない。子どもの頃は枝ごと折れた柿を拾って喜んだのに。でも、大人にとっては大変なことだったのかも知れない。実って刈るばかりの稲が倒れてしまう。そうすると芽が出てしまう。米の等級も下がってしまう。

そういえば、子どもだって大変だった。全身濡れて帰ってきたり、傘を飛ばされたリ。でも、そういうことさえ楽しかったものだ。

草花の屏風をたゝむ野分哉 也好