季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

繭玉(まゆだま)

我が家の方では餅花(もちばな)といった。養蚕を行う地域では繭玉というのだろう。
正月気分がぬけた頃、山に行って木を切ってくる。父が言うには、花をつけない木に色を付けた餅をくっ付けて飾ってあげるのだという。何という名の木だったかは分からないが、枯れ木に花を咲かせるような優しさが感じられた。本来は、豊作を願っての行事である。
冬の殺風景ななか、玄関の土間に餅花を飾ると、わずかながら華やぐ。そうした、冬の間の知恵なのかも知れない。幾つかの句には、赤ちゃんを餅花の下で寝かせるようなものがあった。餅花がつくった結界に幸せがあるのかも知れない。
まゆ玉のいのち愛しめとしだれけり 轡田進