季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

蠅虎(はえとりぐも)

子どもの頃、戸袋や縁側に蠅とりグモがいたものだ。人に敵意を表すでもなく、愛らしい。密閉度の高い最近の家屋にいると間違えて入ってきた感じだが、生家など内と外がオープンだから、縁側などによくいた。陽だまりに蠅もよく来たから、かっこうの餌場といえた。日差しが強くなると、ずいぶんと奥までやってきた。あれ、ということは、見かけたのは冬だったのではないか。
クモといえば多くは巣を張って待ち伏せするが、蠅とりグモの場合は巣を張らずに、飛びかかる。下の句で「子が跳べり」とある。確かに小ぶりの蠅とりグモがいた。生意気にも、親グモと同じ振る舞いだった。
これ見よと蝿虎の子が跳べり 藤田湘子