季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

施餓鬼(せがき)

今日はお施餓鬼だよ、という親の声に伴われて寺に行くと村中の人々が集まっていて、子どもたちは寺のいろいろなところを遊び場にする。

やがて施餓鬼が始まる。何人もの坊さんが経を唱え、そのうちシンバルのようなものを打ち鳴らして集まった村人のなかを回り始める。お菓子がばらまかれる。子どもたちはそれを拾う。

新しい卒塔婆が配られて、それをもってそれぞれ墓に向かう。

仏教には六道輪廻の考え方があって、餓鬼道もその一つ。いつも飢えにさいなまれて苦しむ世界だ。そういう餓鬼に施しをする。そういうのを発端にして、先祖を思う行事。もちろん子どもの頃、分かるはずもない。喜々としてお菓子を拾う。自分たちが餓鬼であることも知らずに。

お施餓鬼や浮世の餓鬼は梨かじり 波多野晋平