季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

餅搗(もちつき)

米には穀霊が宿るなど神聖なものだった。だから餅も同様。

でも杵と臼で餅を搗くのは過去のものとなった。餅つき機で手軽に餅がつける。

子どもの頃、父が餅を搗き、母が返しているのを眺めていたものだ。掛け声をかけて、手早く餅を返す。危なくないのだろうかとハラハラしてみていたが、高校生くらいになると、餅つきをさせられた。その時も母が返す役目だった。

実際にやってみないと分からないと思うが、蒸かしたばかりのご飯を勢いよく搗いたのではご飯が飛び散ってしまう。捏ねるようにして、餅のようになってきたら大きく杵を動かして餅を搗く。下の句にあるように、しぶきを浴びたものだ。

餅つき機にはそのような情緒がない。

一臼を搗きて全身餅しぶき 坂口百葉