季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

針供養(はりくよう)

事(こと)について、少しややこしいことを書いておきたい。事というのはことかみさまのこと。ことかみさまのお祭りが2度ある。12月8日と2月8日の2回。で、この日は「事八日」「事の日」などといわれた。また、コトノカミが「年神様」か「田の神様」かで、事始めと事納めの時期が逆転する。
正月行事の準備をするのが12月8日で「事始め」、2月8日が「事納め」。ところが、田の神様の場合は2月8日が「事始め」で、12月8日が「事納め」。
神事と日常(農事)を切り分けて、一方の始まりは一方の終わりとなる。ということは、人の事始めは2月8日、神の事始めは12月8日。人の事始めの時期が新暦だとこの時期になる。働いてきた針を供養する習わしがある。2月8日に行うところと12月8日に行うところとある。東日本では、「事八日」に妖怪や厄神が家を訪れるので身をつつしむ日とされ、この日は針に触れないようにしたという説もある。江戸の町では、妖怪や厄神を追い払うまじないとして、目籠をくくりつけた竹竿が町中に立ち並んだという。
あけたての白き障子や針供養 日野草城