季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

稲の花(いねのはな)

いちめんに実った田をみると、一粒一粒に花が咲き、受粉し、こうして実ってきたのだという営為に頭の下がるような思いがする。いまでこそ機械化が進んだが、以前は田んぼをはい回るようにして稲作は行われたのである。

稲の花をつけるようすを模型にしたものが小学校にあった。そのせいか、額が開いて、受粉が行われる炎天下の儀式が、まるで模型の動くようにイメージされる。

穂のできるのは稲に限らず、雑草にも多い。大仰な花を咲かせるわけでもなく、つましい植物である。穂は下から上に順に咲いていく。何事かあったとしても、一度に咲くわけではないから、また実をつける機会は残されている。用心深い植物でもあるわけだ。

塩辛きうはくちびるや稲の花 小山森生