季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

桐一葉(きりひとは)

他の樹木に比べて、青桐は一足早く落葉する。早く散ることでまだ夏の気配なのに秋の訪れを感じる、そんな思いを伝える言葉である。物事の予感、でもある。とくに、物事の衰退していく予感を味わう。日本人の好きそうな思いなのだろう。俗に、一葉落ちて天下の秋を知る、などという。

大きな葉が落ちるので、目立つことでもあるのだろう。桐には特別な信仰というようなものがある。近代は日本政府の紋章であり、今でも日本の内閣総理大臣の紋章である。江戸時代以前からも戦国武将の紋章として使われてきた。

かぞえきれない月日のなかの桐一葉 津沢マサ子