季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

飾臼(かざりうす)

餅を搗く臼はめでたいものだった。ないがしろにはしない。普段、使わない時も裏返しにして土間に置く。正月には注連縄を飾る。

下の句、そういう臼に鶏が飛び乗るというのだから、鶏は放し飼いなのだろう。完全放し飼いではなく夕方につかまえて鶏小屋に入れる場合もあった。隣に住む爺さんが、鶏をつかまえるのがうまかった。どうしたらそんなにうまくつかまえられるのか、聞いたことがあった。

後ろから近づいて、掌をそうっと腰のあたりに置くと鶏は雄鶏が載ってきたと思って静かにうずくまりつかまえられるという。やってみたがうまくいかない。小学校にも行っていない頃の思い出だが、不思議に覚えている。本当の話なのかほら話なのか、いまだに分からないからかも知れない。性的な感じがあったからかも知れない。

鶏のとびあがりたる飾臼 五十嵐渡河