季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

桐の花(きりのはな)

なんとも微妙な時期に咲く花である。春の花見イベントも一段落したころに、花をつける。桐の花を話題にしたことはないし、しようとも思っていなかったが、バスに乗っていて見かけたのである。薄紫の、一個一個はよく分からないが、全体としては満開。ネットで、花の構造を見てみたが、それでもよく分からない。冬、乾いた実を見たことがあるが、食べるでもなく、関心をひかない実である。
桐。実家にもあった。父の話では、大きくして売るのだと言っていた。タンスや下駄の材料になる。育つのが早いし、切ってもすぐに芽が出てくる。どうやら切っても切っても生えてくるからキリというらしい。
柔らかく加工しやすい、肌触りがなめらか、材質としても白く美しい。ほかにどんな美点があったか。そうそう、虫がつきにくいのだという。
500円硬貨に使われたり、勲章のデザインになったり、天皇の衣装にも。蒸気機関車の動輪にもあったように思う。家紋にも多く使われる。どうやら、菊に次ぐ高貴さがある。
なにやら、どうも落ち着かない。桐の木がどうしてそんなに特別の地位を与えられているのだろう。ネットで調べてみると、鳳凰が宿る木なのだと書いてある。
人来れば驚きおつる桐の花 普羅