季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

鳳仙花(ほうせんか)

鳳仙花の句には、田舎の情景を思い出すものが多い。花の咲いた後、実の色が薄くなり膨らんでくると、はじけて種を飛ばす。そのクルっと丸まるのが面白くて、子どもの頃、触ってみたものだ。そういう、なんということはない空白の時間。なにを思っていたのか、今となっては思い出せないし、なにも思っていなかったのかも知れない。

赤や白の花を咲かせるが、その花をもみつぶして爪に色をつけるということは知らなかった。女の子たちの遊びだったのだろう。

鳳仙花の言葉の由来は、中国の呼び方をそのまま音読みしたものらしい。鳳凰の鳥がその名の由来。鳳仙花の花言葉は「私に触れないで」。うん、触れるとはじけてしまう。

ところで書きながら、実と種の言葉の違いに少しいらいらした。食べられるのが実で食べられないのが種? 残念ながらそうではありませんでした。

鳳仙花の実をはねさせて見ても淋しい 尾崎放哉